
「異常なし」のあとも続く食後のつらさを、仕組みから整理する
1か月前の胃カメラでは異常なしと言われた。それでも昼食のあとにおなかが張り、少し食べただけでいっぱいになる感じが3か月ほど続いている。検査の結果を手元に置きながら「見落としがあったのか、疲れのせいなのか」と迷う方は少なくありません。
胃の形に変化がなくても、胃の動きや感じ方の変化で症状が出ることがあります。この記事では、機能性ディスペプシアを含む原因、早めに受診したい症状、仕事中や家族と食べるときに試せる工夫、薬の選び方、相談するときに持っていきたいものを順にお伝えします。
この記事の要点まとめ
- 胃カメラで異常がなくても、胃の動きや感じ方の変化で、胃もたれなどが続くことがあります。
- 吐血や黒い便、突然の強い痛みは早めに受診し、体重減少や食べづらさの変化も医師に伝えましょう。
- 食事量や薬について医師と相談し、症状が続くときは検査結果や食事の記録を持参して再相談しましょう。
目次
胃カメラで異常なしでも胃もたれが続く原因

胃カメラで「異常なし」でも胃もたれが続くのは、検査で見えるのが粘膜の形の変化に限られるためです。胃の動きや感じ方の変化は画面に映りません。代表的なものが機能性ディスペプシアで、胃腸炎のあとや薬の影響が重なることもあります。
胃カメラで見える粘膜と、見えない胃の働き
胃カメラは、食道・胃・十二指腸の内側を見て、潰瘍やできもの、炎症がないかを確かめる検査です。一方で、食べ物を送り出す速さや、胃が刺激にどれだけ敏感かといった「働き」は、ふだんの検査で見るだけではわかりにくい部分です。
胆のうや膵臓は胃の外にあるため映りません。ピロリ菌の感染も、別に検査をしないと判断できない場合があります。「異常なし」は、検査した時点で見える範囲に病変がなかったという意味で、症状を否定するものではありません。
ポイント
胃カメラの「異常なし」は粘膜に病変がないという評価です。胃の動きや感じ方の変化は、別に考える必要があります。
機能性ディスペプシアでは胃の動きや感じ方が変わる
機能性ディスペプシア(FD)は、症状を説明できる病変が見つからないのに、胃もたれやみぞおちの痛みが続く状態です。世界各地の調査でも一定の割合でみられ、成人の一定の割合が当てはまるとする報告もあります。
健康な胃は、食べ物が入るとふくらんで受け止め、少しずつ十二指腸へ送り出します。FDでは、このふくらみが不十分で早く満腹になったり、送り出しが遅れてもたれたりします。わずかな刺激を強い痛みとして感じる「胃の知覚過敏」が関わることもあります。
脳と胃腸は、自律神経などを通じて互いに影響し合っています。睡眠不足や緊張が症状に関わることはありますが、ストレスだけで説明できるものではなく、気持ちの問題として片づける必要はありません。
少量で満腹になる・みぞおちが痛むときの診断の考え方
代表的な症状は次の3つです。
- 食後のもたれ
- 少し食べただけで満腹になる(早期満腹感)
- みぞおちの痛みや焼けるような感じ
国際的な診断基準(ローマ基準)では、こうした症状が直近3か月続き、始まりが6か月以上前であることなどを目安にしています1。これは診断をそろえるための枠組みで、期間を満たすまで受診を待つ必要はありません。
また、胃カメラが正常だったという理由だけでFDと決めるわけでもありません。ほかの病気が隠れていないかを、症状の経過と診察を踏まえて確かめていきます。
胃腸炎のあとや、飲み始めた薬が関係することも
急性胃腸炎で下痢や発熱が落ち着いたあとも、胃の不調だけが残ることがあります。急性胃腸炎にかかった人のうち、そのあとにFDがみられた人の割合は約12.7%でした2。
飲んでいる薬についても、受診のときに伝えてください。飲み始めた時期や量を増やした時期、胃もたれが始まった時期をメモしておくと、経過を説明しやすくなります。処方された薬を自分でやめず、まず医師に相談してください。
胃もたれの再受診を急ぐ症状と、追加検査を考える目安

前回の胃カメラで異常がなくても、新しい症状が加わったときや症状の性質が変わったときは、改めて相談してください。急ぐ症状、早めに相談したい症状、別の病気を確かめたい症状に分けると判断しやすくなります。
吐血・黒い便・突然の強い痛みは受診を急ぐ
次のような症状は、消化管からの出血や急な病気の可能性があり、救急外来の受診や救急相談を考える目安です。
- 血を吐く、またはコーヒーかすのようなものを吐く
- タールのように黒くねばりのある便が出る
- 突然の強い腹痛、胸の痛みや冷や汗を伴う
- 意識が遠のく、立ちくらみが強い
- 吐き気が続き、水分もとれない
これらは次の予約を待たず、すぐに医療機関へ連絡してください。夜や休みの日に迷うときは、お住まいの地域の救急相談窓口も使えます。
体重減少や食べづらさの悪化があれば早めに再相談を
急ぐほどではなくても、早めに伝えたい変化があります。食事を控えていないのに体重が減る、飲み込みにくい、健診で貧血を指摘された、吐くことが増えた、といった場合です。
年齢を重ねてから初めて出た症状、胃がんの家族歴、胃潰瘍などの既往、前回の検査から時間がたっていることも判断材料になります。とはいえ年齢や期間だけで再検査を決めるわけではありません。仕事や食事への支障が続いていること自体も、十分な相談理由です。
胸焼けや右上腹部の痛みがあるときは別の病気も確認
胸焼けや、酸っぱいものが上がってくる感じが目立つときは、胃食道逆流症(胃酸が食道へ逆流する病気)を考えます。胃カメラで食道にただれがなくても、逆流による症状が出ることがあります。
胃潰瘍は胃カメラで確かめられる病気ですが、胆のうや膵臓の病気は胃カメラだけでは評価できません。右上腹部の痛み、背中へ広がる痛み、発熱、皮膚や白目が黄色くなるといった変化は、診察の大切な手がかりです。症状だけで病名は決められないため、気になる点はそのまま伝えてください。
血液検査・エコー・CTは疑う原因に合わせて選ぶ
追加の検査はすべて行うのではなく、考えられる原因に合わせて選びます。血液を調べて貧血や肝臓・胆道・膵臓の数値を確かめ、お腹のエコーで胆のうや肝臓を見ます。必要に応じてCTでお腹の中を広く調べるほか、前回ピロリ菌の検査を受けていなければ、その確認も選択肢です。
糖尿病が疑われるときは、血糖値やHbA1cを調べることもあります。HbA1cは、ここ1〜2か月ほどの血糖値が全体としてどのくらいだったかを知る目安です3。胃カメラの再検査が必要かどうかも、症状・診察・前回の結果を合わせて判断します。
食事の工夫と薬で胃もたれを和らげ、改善しなければ相談を
胃もたれは、食べ方の調整と症状に合わせた薬を組み合わせて和らげていくのが基本です。治療を続けても変化が乏しいときは、薬や見立てを見直すために再度相談してください。
短い昼休みや家族との夕食では、一度に食べる量を調整
昼食が午後にずれ込む日は、空腹のあまり短時間で詰め込みがちです。午前中に小さなおにぎりやヨーグルトを少し口にしておき、昼食を控えめにすると、胃にかかる負担を分けられます。
家族と同じ献立でも、最初に取り分ける量を少なめにし、足りなければおかわりする形にすると無理が減ります。「おなかがいっぱいなら残す」と家族で共有しておけば、お子様に余計な心配をかけずに済むこともあるでしょう。
脂っこい料理や飲酒、早食いで症状が強まる方は多いものの、影響の出方には個人差があります。一律に厳しく制限するより、自分の症状と結びつくものを見つけて調整するほうが続けやすいはずです。睡眠の確保や軽い運動も、生活習慣の改善を支える工夫になります。
胃酸を抑える薬・胃の動きを整える薬を症状に応じて使う
FDの薬は、症状のタイプや併せ持つ病気に応じて選びます。胃酸を抑える薬や胃の動きを整える薬には、胃もたれやみぞおちの痛みなどの症状を和らげる効果が期待できます。
ただし合う薬は人によって違い、薬を飲み始めてからの体調の変化にも気をつけます。気になる変化があれば、量や種類の見直しを医師と相談してください。
ピロリ菌がいるとわかったときは、胃の病気を防ぐことも考えて、菌を取り除く治療を行うか別に判断します。一般的には、胃もたれがいつから続き、どのような暮らしをしているかを踏まえます。そのうえで、薬やピロリ菌を取り除く治療、食べ方などの見直しから、原因に合うものを考えます。
薬を始めたら再診時期を決め、食べやすさの変化を確認
薬の効き方を判断するまでの期間は、薬の種類や症状の強さで異なります。処方の際に、薬や症状に応じた再診の時期を医師と決めておくと見通しが立ちます。
再診では、食べられる量や仕事への影響がどう変わったかを確認します。FDの薬には複数の選択肢があり4、変化が乏しければ飲み方や原因の見立てを振り返り、薬の変更や追加検査の必要性を改めて検討します。症状が強まったり体調に気になる変化が出たりしたときは、予定日を待たずに相談してください。
前回の胃カメラ結果と食事の記録を持って相談する
前回の検査結果は、同じ確認を繰り返さず、次に調べるべきことを絞る手がかりになります。相談時には次のものを用意すると話が進みやすくなります。
- 検査を受けた日と、どんな結果だったかがわかる用紙(画像や、組織を調べた結果があればそれも)
- ピロリ菌の検査歴・除菌歴
- お薬手帳(市販薬やサプリメントも含めて)
- 食事の時間・量・内容と、症状が出るまでの時間や強さのメモ
記録はスマートフォンに一言ずつ残す程度で十分です。
ポイント
結果用紙と数日分の食事メモがあれば、追加検査が必要かどうかを前回の結果と照らし合わせて判断しやすくなります。
再受診では、前回の結果を踏まえ、追加検査の要否や治療について医師と相談します。「また異常なしで終わるかも」とためらう場合も、結果用紙と現在の症状を整理しておくことが、相談の手がかりになります。
よくある質問
Q1. 胃カメラで問題なしと言われたのに、胸焼けがあるのはなぜですか?
A. 胃酸が食道へ逆流しても、食道の粘膜にただれが見られない場合があります。胃カメラで変化がなくても逆流による胸焼けは起こりうるため、症状が出る時間帯や食事との関係を記録して医師に伝えてください。
Q2. 女性の胃もたれには、どんな原因が考えられますか?
A. 女性も男性も、機能性ディスペプシアや胃食道逆流症、ピロリ菌などが胃もたれに関わることがあります。加えて、食事の時間が不規則なことや睡眠不足、生理の前後の体調の変化が関わることもあります。どれに当てはまるかは、いつからどのような症状があるかを踏まえて医師が判断します。
Q3. 胃もたれは自然に治まりますか?
A. 生活の見直しで軽くなる方もいます。ただし、機能性ディスペプシアでは、いったん症状が落ち着いても、またつらくなることがあります。数週間たっても続く、または食べられる量が減っているときは、自然に治まるのを待たずに相談してください。
Q4. 再検査やCTが次々に必要になりますか?費用も気になります。
A. 追加の検査は、今の症状や診察でわかったこと、前回の結果から必要なものを選ぶため、すべてを同じように行うわけではありません。費用はどんな検査を受けるかや、保険で自分が支払う割合によって変わり、受診先によっても異なります。具体的な金額は、受診先に確認してください。
参考文献
1. 機能性ディスペプシア (FD) | KOMPAS – 慶應義塾大学病院 医療・健康情報サイト. https://kompas.hosp.keio.ac.jp/disease/000802/
2. Porcari S, Ingrosso MR, Maida M, et al. Prevalence of irritable bowel syndrome and functional dyspepsia after acute gastroenteritis: systematic review and meta-analysis. Gut. 2024. PMID: 39013599. DOI: 10.1136/gutjnl-2023-331835
3. 国立健康危機管理研究機構 糖尿病情報センター「糖尿病と関連する検査」 https://dmic.jihs.go.jp/general/about-dm/030/010/02.html
4. Ford AC, Moayyedi P, Black CJ, et al. Systematic review and network meta-analysis: efficacy of drugs for functional dyspepsia. Aliment Pharmacol Ther. 2021. PMID: 32936964. DOI: 10.1111/apt.16072
日本消化器病学会消化器病専門医
日本消化器内視鏡学会内視鏡専門医
日本消化管学会胃腸科専門医
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日本内科学会
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緩和ケア研修会 修了
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